子供の「歯科矯正」は、いつから始めればいい?(1)

歯列不正にはさまざまなタイプがあり、それぞれ治療の適切な時期がおおよそ決まっています。

低年齢で治療を始める方が好ましいのは、顎が左右的にずれた噛み合わせ(交叉咬合 こうさこうごう)です。この不正は乳歯列でも治療を開始します。

奥歯にはほっぺた側(頰側)、舌側に二つの山があり、上の歯列と下の歯列で上の歯列が外側(頰側)になるように噛み合っています。これが、左右どちらかで逆の噛み合わせになっているのが、交叉咬合です。

交叉咬合のイメージ

交叉咬合では、異常がある側の下顎の骨や組織が圧迫され、反対側が引き延ばされます。ちょうど成長している時期に力が非対称にかかるのです。そのために顎の成長も左右非対称になり、結果として顎先の位置が問題がある側に向かって誘導されてしまうというのが、最大の問題点です。

平たく言えば、顔が右か左に向かって曲がってしまうのですね。
顔が曲がったら大変だ、早く見つけてあげなければ!と思うのですが、お子様が噛んだ状態を観察するのは難しいのも事実。気になりましたら、歯医者さんでご相談されるのが賢明です。

次に早期治療をお勧めするのが、反対咬合です。
これも成長に関係があります。

顎の成長は上と下で時期が異なります。上顎は脳頭蓋と一緒に育ち、下顎は身長の伸びが著しい、第二次性徴期と時期を同じくします。上顎の成長は10歳ぐらいで90%以上出来上がってしまうのに下顎は女の子なら小学5~6年ぐらい、男の子なら中学生ぐらいに成長のピークがくるのです。お子さんの帽子のサイズを思い出してみてください。3歳ぐらいでも50cm近くなりますね。頭の成長の時期は早いのです。

下顎前突のまま頭と上顎の成長の時期が終わりに近づき、次に下顎がぐんぐん育つ時期を迎えたら・・上の歯に囲まれずに自由に下顎が育ち、骨格まで下顎前突になるリスクがあります。

反対咬合のイメージ

だから10歳よりも前に、上下の顎の前後関係は正しておきたい。これが下顎前突の治療を早めにお勧めしたい理由です。

一方で、下顎前突の方の中には骨格的に下顎前突という方がわずかに含まれていることも気がかりな要因です。せっかく下顎前突を子供のうちに治しても、どんどん下顎が発達してまた反対咬合になってしまう・・という方がいらっしゃいます。持って生まれたものですから致し方ないのですが、ご本人も親御さんも残念に思うことだとお察しします。そのため、成長が終わるまで油断がならないのも下顎前突の特徴であり、小さな頃から18歳ぐらいまで気をつけて見守り続けることもあります。そして不本意にも骨格性の要因をお持ちであった時には、では骨格から正すのか、歯の矯正治療単独で治せるのか、決断することになります。

歯並びの異常には遺伝的な要因もあります。例えば血縁の方に反対咬合の方がいらっしゃるならば、用心してかかる必要があります。御受診される前に、ご親族の歯並びも調べていただけますと参考になります。

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