虫歯の原因とは?
虫歯ができてしまう原因には4つの要素があります。
- 細菌(虫歯の原因菌)
- 食物(糖分の摂取)
- 歯質
- 時間
以前は前3者が重なると虫歯になるというkeyesの輪という図がよく知られていましたが、今は時間という要素も加わるとされています。
細菌(ストレプトコッカス・ミュータンス菌)は、ほぼすべての日本人の口腔内にいる常在菌です。
糖を分解して酸をつくり、菌体の外にプラークをつくります。
酸は歯質を溶かし、プラークは菌を保護する役割を果たします。
歯質は残念ながら個体差があり、強い方も弱い方もいます。
弱い方にとってフッ素の使用は効果的です。
歯質と並んで大切なのが唾液の緩衝能です。
唾液は通常ほぼ中性なのですが、食物の摂取で少し酸性になります。
pH5.5より低くなると、エナメル質が酸によりダメージを受ける「脱灰」がおきます。
一方で唾液には、酸やアルカリへの変化をひきもどす、緩衝能という性質があります。
唾液の緩衝能により、食物摂取で一度酸性になった唾液は再び中性に戻るのですが、その能力には個人差があるのです。
緩衝能が高いなら脱灰が起きている時間が短いけれど、低ければ長くなってしまいます。
時間は食物を摂取している時間の長さです。
だらだらと食べ続ければ、いくら良い唾液の持ち主でも、エナメル質の脱灰がつづき、ダメージが大きくなります。
細菌を完全に取り除くのは不可能ですし、食物は食べなければならない。
歯質はフッ素で多少強化できるとしても、唾液の緩衝能は変わらない。
だから「食物の摂取の仕方、プラークの除去に気を配り、定期検診で自己管理の不備を教えてもらいながら虫歯は早期発見早期治療する」というのが結局は早道となるのです。
虫歯を予防する方法
虫歯を予防するポイント4つまとめました。ぜひ参考ご一読ください。
歯磨きのタイミング
虫歯予防の観点から言うと、食事直後に歯磨きをすることで虫歯菌の繁殖を防ぐことにつながりますので、食後なるべく早く磨くことをお勧めします。
ただし、酸蝕症の方や酸性の食べ物や飲み物を好まれる方は、歯を痛める原因になる可能性があるため、食後30分ほど経過してから磨くほうが良いでしょう。
ブラッシングの徹底
ブラッシングを徹底しましょう。全ての歯の全ての面を磨くことが理想です。特に前歯の裏側のくぼんだ面と、歯と歯が隣り合う面(隣接面)は、磨き残しが出やすいので注意が必要です。鏡を見たり、順番を決めてブラッシングをすることで磨き忘れを防ぐことにもつながります。
歯磨き後、舌で歯を触れてみてください。ツルツルになっていれば汚れは落ちていますが、ザラザラと感じる箇所があればきちんと磨けていません。磨き方の癖で、毎回同じ箇所が磨き残しになっている場合もあります。虫歯の原因になりますので注意してください。
デンタルフロスの使用
長時間かけてしっかり歯を磨いても、ブラッシングのみでは、およそ60%程度のプラークしか落とせないと言われていますが、デンタルフロスを使うことで歯と歯の間のプラークも落とすことができ、およそ80%程度まで除去率が高まります。また、デンタルフロスは歯周病や口臭予防にも効果的です。特に就寝前の歯磨きの際には使用をオススメします。
フッ素の使用
冒頭にも書いたとおり、虫歯は酸によって歯の表面の硬いエナメル質がダメージを受ける「脱灰」によって起こります。
歯科で使用されるフッ素(フッ化物)はエナメル質の結晶を構成するハイドロキシアパタイトに化学的に結合し(-OHと置換し)、ハイドロキシアパタイトがフルオロアパタイトになるので、歯質の強化につながります。
フッ素の取り入れ方を二つご紹介しますので参考にしてください。
家庭でフッ素配合歯磨き粉を使用
毎日のブラッシングの際にフッ素配合の歯磨き粉を取り入れましょう。日本では2017年より歯磨き粉のフッ素濃度上限が1000ppmから、1500ppmに引き上げられました。
唾液の緩衝能・分泌量などから特にリスクが高いと考えられる患者さんには、高濃度のタイプをお勧めいたします。
歯科での高濃度フッ素の塗布
歯科では家庭用の数倍~10倍程度の高濃度フッ素を塗布することができます。特にお子さまの虫歯予防には効果的です。数ヶ月に一度の塗布をオススメしています。
また、当院ではご希望の方には
・唾液検査(分泌量、緩衝能)
・口腔内細菌検査
を実施し、ご自身のリスクに合わせた予防管理についてご提案しております。
虫歯菌は垂直感染(親からこどもに感染)を起こします。ご家族そろっての検査をお勧めしています。